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<コラム>数学の予習について少しだけ

【数学科 前田 博司】

数学の予習に関して、“(知識が足りなくて)解けないから予習しても無駄”、“30分考えたけど何も浮かばない” という声をたまに耳にします。

予習に必要性がないなら、やらない方がよいに決まっています。時間を無駄にしなくて済むからです。その分の時間を復習にまわすとか他の教科に費やすとかした方がいかにも効率的です。今回はそんな数学の予習について少しお話をします。

勉強するときは,予習→授業→復習 の3つの行程があります。もう少し具体的に書くと、

が基本の勉強法となります。見てお分かりの通り,実際には予習より復習の回数の方が多いのです。復習の回数を1回減らしても「予習→授業→復習」の3つの行程をすべて行なっているわけですが,予習を抜くと「授業→復習」の2つの行程だけということになります。すなわち、3つしかない行程のうち1つが欠けるわけです。これは入試学力にどのように影響するかを考えましょう。まず、高等学校の数学の授業は大まかに分けると以下の2通りに分けられると思います。

(A) 教科書を使って新しい知識を初めて学ぶ授業。

(B) 既に習い終えた単元が定着できているかを確認するための,問題集などを使った演習解説授業。主に受験対策。

この(A),(B)の2つのタイプでは、予習が与える意義が異なります。まず,(A)のときの予習は、次の授業でまた新しいことを学ぶので、あまり予習に対して神経質になることはありません。復習に時間を割いて結構です。ですから,先生の方から指示があったときだけ行えばよいと思います。ところが,(B)の場合は予習をすることが非常に重要となります。実際に数学の問題を解くという行動は、頭の中のひきだし(いままでに学んだこと)を一つ一つ開けて,適した解法を探し出そうとする我慢の連続の作業です。これは、実は「想起」という一つの情報出力方法そのものであり、実際に大学入試当日に試される能力なのです。すなわち、『予習』=『試験』ということです。自分一人で解くための力(基礎知識の正確さ,適確な解法を選ぶ力,…)を入試レベルまでに養うには,この予習を介した練習が不可欠なのです。特に、演習形式の授業(入試問題を解くことを中心とする授業)の場合,予習をするのとしないのとでは後の成績に大きく差がでてくると思います。

では予習の仕方のポイントですが,“模試”のときってなんとか解こうとしませんか?その何とか自分して解こうという姿勢・思考が重要なのです。ですから、予習のときはいつも予習を“模試”だと思うことが大切です。そうすることで記述を意識して必ずなんとかして答案を書こうとします。頭をフルに使って非常に疲れる作業ですが,自然と,どこから解けないのかを授業まで覚えておくことができます。この作業を行っておくことで、授業から得られる情報量が多くなり、結果的に予習→授業→復習がスムーズになっていきます。

ただし、予習に時間をかけすぎることは、かえって逆効果となる(知識を捻じ曲げて無理矢理用いる)ときもあります。実際の入試問題にかけられる時間は大問1題あたり25分~35分程度です。たまには良いのですが、基本的には予習は1題25分~35分程度です。また、仮に初めから全く解法が思いつかない時でも、問題文を授業の前に暗記しておくことで授業が理解し易くなります。一度試してみてください。

授業は,予習をしなくても理解できるものです。それは,すでに学んだことや解法の手順を先生が話してくれるからです。ところが,しばらく後で自分で解こうとしても解けないということがしばしば起こります。それは「想起」の訓練ができていないからです。予習を行うことで,いままで習った知識が頭の中で整理されていき,真の実力が身についてくると考えます。


著者プロフィール

函館ラ・サール高校卒、早稲田大学理工学部数学科卒。道立・私立高等学校教員を経て、当校数学科勤務。30年以上に渡り入試数学の指導を行い、「これほど分かりやすい数学は知らなかった」と多くの受験生から支持を受ける。医学部を始めとする多数の難関大学合格者を輩出し、現在、当校数学科主任。

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