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言語学習には詰め込み型学習も時に有用である

【英語科 武田 秀久】

私は教養から専門に移行した時、なんと実質五つの外国語が必要だということに気づいた。英語・フランス語・中国語・パーリ語・サンスクリット語である。これはひどいことになった。どうしよう。これじゃあ哲学科じゃなくて、言語総合学科じゃないの?サンスクリット語-日本語辞典は間違いが多いという。じゃあサンスクリット語-英語辞典しかない。これまた、たまに間違っているという。参考文献はドイツ語のものが良いという。しまった、入学時にフランス語を選択してしまった。さらに追い討ちをかける。サンスクリット語は性・数・格変化がラテン語と同じくらい複雑だという。確かに「馬」というたった一つの名詞でも1匹のオスの馬・1匹のメスの馬・2匹の馬・たくさんの馬といった具合だ。単数・両数(dual)・複数の他に、男性・女性・中性形があり、さらに格変化は八つもある(主格・所有格の他に与格だの奪格だの…)。

今でも強烈に覚えているのは、最初のサンスクリット語の予習の時だ。3時間汗水たらして、たった3行しか訳せない。1時間で1行というコストパフォーマンスの低さだ。先生曰く、「たかだか外国語なんてものは、一気に1500語くらい覚えて、さっさと文法書を一冊やって、あとはひたすら読めばいいんです。」確かに、哲学を勉強するのが本意なのだから、そんなに語学に時間をかけるのは本末転倒だ。でもこれじゃあ卒論を書くまで、外国語漬けだ。勘弁してくれ!

7カ国語以上できる人の言うことだし、東大出てるし、ドイツで博士号をとった人だし、もうどうにもならないし、とりあえず言われた通りやるしかない。やってみると、なるほど、先生が言ったやり方は、ちょっと粗削りだが、毎日少しずつやるより、ずっと効率が良かった。8時間ぶっ続けでやれば、訳のわからない文法書も、何とか1週間位で片づけることができた。単語も毎日少しずつやるより、一気に3日かけて覚えてしまったほうが早かった。語学は毎日コツコツと、が大きな誤りではないかと考え始めた。中上級者にとっては、確かにそうかもしれないが、初学者が基礎を固めたいなら、この方がずっと楽だし、効率も良い。

何の因果か、予備校に勤めることになり、英語を教えることになった。語学が大の苦手だった私は、「たかだか大学受験の英語なんてもの…」を、どうしたら生徒に理解させ、できるようにさせることができるのか、今でも悩み続けている。


著者プロフィール

函館ラサール高校卒、中央大学法学部中退、北海道大学文学部卒。学生時代から30年以上に渡り受験指導を行い、多くの難関私大・国公立大合格者を導く。点数に結びつく指導法を日々開発・実践している。現在、医学部プラス主任、英語科。英検1級。

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