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受験生と歯の痛みについて②

【事務局/歯科医 関口 千史】

前回のコラムでは受験生における歯の健康の大切さについて述べましたが、今回は痛みの原因の一つ「歯ぎしり」にスポットを当ててみようと思います。「歯ぎしり」といいますと、真っ先に思い浮かぶ映像は就寝時ギリギリと歯をこすり合わせて音を出している姿、かと思います。しかし、これは歯ぎしりの一部に過ぎません。「歯ぎしり」は英語で「Bruxism(ブラキシズム)」と言うのですが、ブラキシズムはさらに大きく3つに分類することができます。

一つ目は先ほど挙げたように歯をギリギリと横にこすり合わせる動き、「グライディング」です。口を開けてみて犬歯(糸切り歯)が平らにすり減っていたなら、その方は間違いなくグライディングをしているでしょう。二つ目は「クレンチング」です。これは日本語では「くいしばり」と言われるものです。歯を合わせて力一杯噛んでいるため、朝起きると顎がだるいなどの症状がありますが、くいしばりだけの場合音が出ないので、他覚的に気づくことが難しくなります。また、くいしばりは日中に起こることもしばしばで、何か夢中に作業をしていたり、力仕事をしている時などは無意識にくいしばっていることが多々あります。三つ目は「タッピング」です。これは上下の歯をカチカチと鳴らして何度も噛み合わせている状態をいいます。

そして、夜間に出現した場合、これら3種類は単独のことはあまりなく、組み合わさって出現します。ブラキシズムをしているとどのような症状が出てくるかといいますと…かなり多様です。口腔内の症状から挙げますと、虫歯でもないのに歯がしみる歯が浮く感じがする粘膜や舌に傷ができやすい、また舌の側面が波状の痕ができる、などです。また、口腔外では頭痛肩や首のこり顎の痛みなどです。

このような症状があれば当然、受験生にとっては勉強に集中できないでしょう。しかし、さらに難しいのはブラキシズムの発生原因はストレスや習癖、噛み合わせの良し悪しと多種にわたっており、明確になっていないことです。原因が明確ではないので、対処療法しかなく、まずはマウスピースを入れ顎の負担や歯の負担を軽減する、肩や首が痛い場合は温めたたり、マッサージ、ストレッチなどを。頭痛がひどい場合には鎮痛剤を服用する、明らかに噛み合わせが悪ければ噛み合わせの調整をするという治療になります。また、ブラキシズムをする方は歯茎が腫れやすくなりますので、念入りな口腔ケアも必要です。

このようにブラキシズムは原因も対処も多様ですが、一番大切なことは「上手に付き合っていく」ということです。過度に気にしすぎたり、不安になることはかえって症状を重く感じることにつながります。原因や症状への対処法を理解し、可能なかぎりのケアを行い、あとは自分の体と折り合いをつけて付き合っていく、これがブラキシズムの治療となります。札幌はすでに秋の気配です。受験はもうすぐそこまで迫ってきています。体調や口腔内の環境を整え、残りの期間を精一杯取り組んでください。


著者プロフィール

札幌北高卒、北海道医療大学歯学部、北海道大学大学院歯学研究院卒、歯学博士。北海道大学病院で歯科臨床研修後、札幌北楡病院歯科、札幌山鼻病院歯科に勤務。2015年より札幌市内歯科クリニックに勤務の傍ら、当校事務兼任。

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