<コラム>栄枯盛衰―ウィンカー付きセミドロップハンドル自転車に思うこと | クラズユニック

Close

コラムCOLUMN

<コラム>栄枯盛衰―ウィンカー付きセミドロップハンドル自転車に思うこと

【理科 花岡 英司】

1970年代前半 私が小学生高学年のころ,セミドロップハンドル,5段変速,ダブルヘッドライト,携帯空気入れ,油圧式ブレーキ,ディスクブレーキ,光が流れて方向指示するウィンカーなどがついた自転車が,多くの男の子にとってのあこがれでした。物欲の塊のような私は当然のようにわがままをいい、親に買ってもらいました。しかもスピードメーターまでつけてです。

ナショナル エレクトロボーイ(1970~1974頃)出典 www.nanamiya-aidma.jp

買ってもらってすぐのころは,ウィンカーが太陽光下では点いているか点いていないかわからないため,わざわざ日が落ちてから点灯させたり,小学生のパワー(仕事率)ではいくら平地であがいても時速30kmを超えるぐらいしかスピードが出ないので,わざわざ遠くにある長く続く坂のあるところに行きスピードメーターの最大値の時速60㎞を出して喜んでいました。

しかし,こんなことは最初のうちだけで,すぐに飽きてしまい,自転車は結局今でいう「ママチャリ」扱いになってしまいました。なんともったいないことでしょう。ただし,後輪のギアを大きい方にすれば軽くしかも速くなると小学生の頭で想像していたことが,実際に乗ってみると軽くするとあまり進まず重くするとよく進むということがわかり「仕事の原理」を知ったことは唯一の収穫だったと思います。

私はそのような自転車に興味がなくなりましたが,世間では華美な自転車はさらに自動車のスーパーカーブームとともにリトラクタブルライト,ラジアルタイヤなどを付け発展していきました。

サリーGTラジアルスポーツ/SL-5GTR 出典:http://comics.sakura.ne.jp/cycle/miya01.htm

しかしその結果,価格が小学生の持つものとしては高すぎるため,PTAなどで問題視されるようになり,さらに追い打ちをかけるように第一次オイルショック,スーパーカーブームの終焉と1970年代後半消え去る運命となりました。その後は自転車の本質である走りを重視した,ドロップハンドルで必要なものをオプションパーツとしてつけ,ほどほどの価格で販売されたロードマン(ブリジストン社他社でも同じようなものが発売されていた)などに取って代わられました。

このウィンカー付き自転車で起こったこと,つまり”過当競争の中で本質ではない部分が変化し続け,後戻りできないようになってしまい,結局最後に競争以外の外的要因で消え去ってしまう“ということが,いろいろなことで見られることに気付くのではないでしょうか。

私は生物も教えているので、外的要因による絶滅といえばとっさに思いつくのが恐竜です。

FIRST TRUE-COLOR DINOSAUR MAGE COURTESY CHUANG ZHAO AND LIDA XING

シノサウロプテリクス(Sinosauropteryx)の羽毛発見以降、実際は鳥類として今も繁栄しているというのが現在主流になっている考えとはいえ、中生代(2.5億年前から6千6百万年前)に繁栄した恐竜がその繁栄の末に大量絶滅にあったことは事実です。小惑星衝突説のほか火山噴火説、それらが同時期(5万年以内)に起きたためによる連動説が確実視されているわけですが、一方で、小惑星衝突の数百万年前から恐竜の種としての多様性・個体数の減少があり、環境の激変から立ち直れなくなった可能性が高いという新説があり、全くもって矮小ながら、本質的にはウィンカー付き自転車で私が感じたことととてもよく当てはまると思います。そして現在進行形で当てはまるのが,不要なぐらい科学技術を発達させているヒト(Homo sapiens)ではないでしょうか。もちろんヒトの絶滅はすぐにというのではなく,恐竜は1億年以上繁栄しましたから,誕生してから5百万年ぐらいしか経っていないヒト属は残り数百万年悪くても数万年ぐらいは大丈夫と思います。もちろん,科学技術で絶滅を回避できると考えたいのですが,私は甘くはないと予想します。


著者プロフィール

旭川東高校卒、北海道大学農学部卒。30年以上に渡り受験指導を行い、特に医療系分野へ多くの合格者を導く。幅広い見識を有し、化学を主教科としながら、物理・生物まで指導の幅がある。現在、当校理科主任。

コラム一覧へ >