【英語科 原 貴弘】
英語学習で音読の効用が唱えられ(記事は有料ですが、無料でabstractまで見ることができます。)、日々の学習に音読を取り入れている人がいます。実際に私自身も音読を通して英語力が向上したという実感があり、現在も行っています。音読を行うことで、
①英語を英語の語順のまま理解できるようになる。
②速読が出来るようになる。
③正しく発音することで、英語の発音、リズム、イントネーションに慣れることができる。
④同じ英文を何度も音読することで、単語、熟語等の個々の要素は勿論、単語動詞の組み合わせの相性(コロケーション)、自然な文、文章全体の構成、展開が自分のものになる。
という多くのメリットがあります。しかし、音読を行うことによる恩恵は何もリーディングだけに反映されるものではありません。上記①②③のメリットからも分かるように、音読によりリスニング力が上がります。リスニングが苦手な人の多くは、リスニング以前にそもそもリーディングが苦手です。何度も返り読みをしている人が、「返り聴き」ができず、一度しか聴くことができないリスニングに太刀打ちできるとは思えません。また、英語の語順で理解出来ても、速く処理出来なければ(つまり速読が出来なければ)、流れてくる英語のスピードについていくことは出来ません。反対に言えば、返り読みをせず、速読が出来るようになれば、リスニングがかなり楽になります。さらに、発音、リズム、イントネーションを意識して音読に取り組めば、リスニングそのもののトレーニングにもなります。
音読の効用は他にもあります。上記④は何に必要なスキルでしょうか?…そうです。音読は英作文に必要な力の養成にも役立ちます。ご存知の通り、英作文が出来るようになるには、
ⅰ)英文法を習得する…英語を自分で作成する際に、構成上のルールを知らなければ組み立てられません。
ⅱ)重要構文が含まれている例文を暗記する…英語でよく使う型を覚えておけば、いろいろな場面に対処できます。
が必要になります。
しかし、それらと合わせて、音読により④の要素も自分のものになれば、英語で表現できるレパートリーが格段に増えます。実際に使われている英語なので、「この表現は間違いない」と自信を持って使うことができます。また、文章全体の構成も意識しながら音読をすると、自由英作文で役立ちます。あるトピックについて意見を述べる際には、例えば、意見→理由、例、説明→結論という型が英語らしく、その型に当てはめるように英語を書こうとするようになります。
このように、音読をすることで、リーディング力をはじめ、英語力が根本的に向上することになります。これまで音読を毛嫌いしてきた人がいれば、是非トライしてみて下さい。即効性のあるものではありませんが、毎日継続して行うと、必ず効果が表れます。
著者プロフィール
札幌手稲高校卒、千葉大学園芸学部卒。卒業後、千葉県内で大手中学受験・高校受験対象の学習塾に勤務し、帰郷後から当校英語科教員として大学受験指導にも携わる。小学生への学習指導から中学受験、大学受験指導まで全ての学年に対する受験指導経験を有する。現在、英語科教員、円山小中学部担任、円山入試研究所担任。