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小学校低学年で身につけておきたい教育課題

【円山校 教務 田村 茜理】

【副校長 福島 拓】

今回は、中学受験を目指す小学校低学年の子を持つ保護者が心配されていること、すなわち「小学校低学年で何を身にさせておきたいか。」について、テーマにしたいと思います。これは、中学受験をするかしないかも決めかねている保護者の方も同じく悩まれていることではないでしょうか。

首都圏では、受験熱がますます低年齢化していることが報道されていますが(「稼げる大人」になる!?過熱する受験戦争:クローズアップ現代)、受験の中心となる通塾に対する考え方としては一応、世論には大きく分けて2種類あると思います。

1. 低学年から受験塾に通い、勉強の習慣をつける

2. 低学年の時は、受験塾ではない計算トレーニング塾に通わせたり、ピアノやスポーツなどの習い事をさせる

1.についてですが、これは現在も少数意見と思われます。元々は首都圏や大都市圏での中学受験自体、5年生からの2年間が主流であったものが、1990年代頃から四谷大塚やSAPIXなどの大手中学受験塾が4年生からの3年間カリキュラムを採用したことで、今では4年生(新学期開始は3年生2月)からの3年間が一般的となりました。現在では、さらに小学校1年生からのコースもあり、受験情報に敏感な保護者の方であればあるほど、できるだけ早く通わせた方が良いのか悩まれる方が多く、よくご相談を受ける点です。

2.についてです。これは今の主流の考えになっていると思いますが、一方で、周囲に1.の考え方ですでに塾に通っているお子様がいらっしゃると、途端に不安を煽られるため、本当に直接的には受験対策ではない、文章問題ではない単純計算練習だけで良いのか、あるいは、学校のテストや全国テストなどの学力テストで点数が低いと、遊び時間すら無駄な時間に感じられ、「中学受験をするかしないかまでは決めかねてはいるものの、本当にこのままで良いのだろうか。」という不安を持たれる方が多いと思われます。特に周囲が中学受験に熱心な環境であればあるほどこの状況に陥りやすく、これこそ、冒頭に述べたような「過熱する受験競争」そのものを表している状況ではないでしょうか。

さて、これらを踏まえてどのような考え方が良いのかを述べさせて頂きます。結論からは、この1.と2.の答えはないのではないかというのが大筋です。特に、「札幌圏においては」、1.と2.それぞれに教育目標は実は一緒で、要は「子供の適性」と「家庭の学習環境」次第ではないかというのが、当校の考えです。ここに、共通した低学年における教育課題があります。

当校では以下の4点を具体的な教育課題としております。

①感受性を高めること

②数字に慣れさせること(計算力)

③言葉を知ること(語彙力)

④やり抜く力をつけさせること(Grit)

の4点です。

このうち、1.と2.に共通するものは、実は②と③で、①と④は勉強だけでは身につかないものです。低学年における通塾についても、教材内容を見ていただければわかるかもしれませんが、4年生以降の直接的な受験対策とは全く違います。なぜなら、教育目標が異なるからです。この時期に行うべきことは、あくまで今後の学習における強固な土台作りであるため、できるだけ楽しく文章を読めたり、計算ができるようにすることに重きを置いているのです。四谷大塚教材は計算内容や語彙はできるだけ4年生以降の内容に緩やかに接続できるように工夫されていますが、逆に言えば、ご家庭で直接保護者の方が何らかの教材を用いて教えても良いですし、計算を公文式やそろばんで、語彙力は漢字検定や習字で代用しても全く問題はないのです。要はこの時期における通塾は、上記②と③を本人(及び保護者)が「どのような環境で行うことがやりやすいか」によるのではないでしょうか。確実に言えることは、子供が「楽しい」「充実感がある」と思える環境が最も適切(かつ高効率)だということです。例えば友達が塾に通っているから、あるいはそろばんに通っているから自分も行きたいという理由づけでも、良い動機付けなのだと思います。ただ、実際は子供は遊びに価値を見出すもので、当然遊び時間の取られる習い事を喜ぶことは少ないかと思います。かと言って、ご家庭で親が直接教えても、子供独特の甘えや親ならではの感情(多くは苛立ちではないでしょうか)が先行してしまい、なかなかうまくいかないことが現実です。いまでは、例えばタブレットでの計算・語彙力アプリもそうですが、世の中には多くの指導形態・学習形態があります。これらの中の選択肢の一つに通塾も入れておく程度が良いかと考えます。

次回は①と④について、特に④は最近文部科学省も学力解析の対象に含めた考え方ですので、詳しくみて行きたいと思います。

 

 


著者プロフィール


田村 茜理

千歳高校国際教養科卒、関西外国語大学外国語学部英米語学科卒。大学在学中にアイルランドDublin City University へ長期留学。卒業後、金融系事務職を経て、現在、当校円山校教務。


福島 拓

札幌北高校卒、信州大学医学部医学科、北海道大学大学院卒。医学博士。道内主要基幹病院勤務、国立がん研究センター東病院シニアレジデント、北海道大学病院腫瘍センター助教を経て、現在当校学校医・副校長。

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