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定年退職後の教員の働き方|北海道の選択肢と報酬水準を整理する

【結論】北海道の公立学校教員の定年は、2025・2026年度が62歳、2027年度以降は63歳へと段階的に引き上げられています。定年退職後の働き方は暫定再任用だけでなく、公立の非常勤講師(札幌市立学校で時給2,884円)、私立学校、学習塾・予備校など6つに整理できます。本稿では制度・報酬水準・登録先を、北海道の事情に即してまとめました。
(2026年8月28日時点/出典:札幌市教育委員会「札幌市立学校の欠員補充・代替職員の勤務条件等について」(令和6年10月1日現在)、札幌市教育委員会「学びのサポーター・介助アシスタント」)

「定年後は、どうされるんですか」

高校を訪問した際、進路指導部の先生とそんな話になることがあります。返ってくる答えは、たいてい歯切れがよくありません。再任用を続けるか、いったん離れるか、決めかねている。そもそも選択肢の全体像が見えていない、という方も少なくないようです。

無理もないと思います。教員の定年は今まさに引き上げの途中にあり、数年前とは前提が変わってしまいました。しかも、この話題を北海道の事情に即して整理した情報が、ほとんど見当たりません。求人サイトの検索結果は出てきますが、制度と相場をまとめて説明してくれるものがない。

そこで本稿では、北海道で教壇に立ってこられた方が定年退職後にどのような働き方を選べるのか、制度・報酬水準・登録先を含めて整理します。学習塾での指導だけでなく、学校を支える職や、学校の外で指導歴を活かす道も含めて扱います。

私たちは札幌で大学受験の指導を続けてきた予備校で、実際に多くの退職教員の方に講師として指導していただいています。私自身は医師として診療にあたるかたわら、この学校法人の運営に携わり、市立小学校の学校医も務めています。予備校の立場だけで書くと自分たちに都合のよい話になりがちなので、本稿ではなるべく制度と数字に即して、選択肢を並べることを心がけました。

まず押さえたい ― 北海道の教員定年は、いま「62歳」

2023年度から、公立学校教員の定年は段階的に引き上げられています。2年ごとに1歳ずつ上がり、最終的に65歳になります。

年度 定年年齢 年度末の定年退職者
2023・2024年度 61歳 2024年3月末に発生
2025・2026年度 62歳 2027年3月末に発生
2027・2028年度 63歳 2029年3月末に発生
2029・2030年度 64歳 2031年3月末に発生
2031年度〜 65歳 毎年度発生

ここで見落とされやすいのが、定年退職者が発生しない年度が2年に一度あらわれるという点です。定年が1歳上がる年度には、その学年にあたる方が前年に退職済みか、まだ定年に達していないため、退職者が出ません。

ご自身がいつ定年を迎えるのかは、生年によって変わります。「60歳で退職」を前提に考えていた方は、まず勤務先で自分の定年年度を確認するところから始めるのが確実です。

選択肢1:暫定再任用 ― 最も一般的だが、給与の落差は大きい

定年退職後、そのまま公立学校で勤務を続ける方法です。1年単位で任用され、希望すれば原則として65歳まで働けます。フルタイム勤務と、週20時間程度の短時間勤務を選べる自治体が多くなっています。

最大の論点は給与です。現役時代の6割から7割程度に下がるのが一般的とされます。自治体によって金額は異なるため、正確な額はご自身の勤務先で確認する必要があります。

この落差については、当事者から率直な声も出ています。ある元公立高校教員の方は、再任用となった最初の給与明細を見て衝撃を受けたと語っています。授業も校務も部活動の指導も現役時代とまったく変わらず、平日は20時過ぎまで残業していたにもかかわらず、支給額が前月からほぼ半減していた、と。

フルタイムを選べば、仕事量は基本的に現役時代と同じです。「給与が下がるのは説明を受けて納得していたが、実際に働いてみると、負担と対価の釣り合いが取れていないと感じた」という声は、決して珍しくありません。

一方、短時間勤務を選べば負担は軽くなりますが、その分の収入減をどう補うかという課題が残ります。

再任用が向いている方

  • 担任や校務分掌を持ち、学校運営に関わり続けたい
  • これまでの人間関係や生徒との継続的な関わりを大切にしたい
  • 共済・社会保険の継続を重視したい

選択肢2:期限付教員・非常勤講師として、公立で教科指導に絞る

再任用とは別に、臨時的任用の枠で働く道があります。産休・育休の代替や欠員補充のための期限付教員、あるいは時間講師としての非常勤講師です。

北海道の場合、道立学校・道内公立小中学校については、北海道教育庁の代替教職員等応募・任用システムを通じて登録・応募ができます。札幌市立学校については、札幌市教育委員会が臨時教諭・非常勤講師・臨時学校事務職員の登録を受け付けており、専用フォームから応募する形です。

この働き方の利点は、担任や校務から離れ、教科指導に専念できることです。「授業だけをやりたい」という方には、再任用フルタイムより現実的な選択肢になります。

報酬は自治体によって異なります。札幌市立学校の場合、非常勤講師の報酬は時給2,884円(地域手当込)です。勤務時間は原則として週15時間以内、専科指導を担当する場合でも最大週20時間と定められており、週20時間以上であれば共済組合・厚生年金および雇用保険の対象になります。

単価は決して低くありません。ただし注意すべき点があります。この職は正規職員の欠員を補充するためのもので、任用期間は欠員の状況に応じておおむね1か月から1年です。有効な教育職員免許状も必要になります。そもそも空きが出るかどうかが読めないため、年間の収入を設計しにくい面があります。

また、勤務日数が限られるため、年間の総収入は再任用フルタイムより低くなるのが通常です。

選択肢3:学校を支える職に回る

教壇に立つ以外にも、学校現場で経験を活かす職があります。

教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)

北海道教育委員会が配置を進めている職で、教員の事務作業などを支援します。募集は全道14の教育局が学校および市町村教育委員会と連携して行っており、関心のある方は地域の教育局のホームページを確認のうえ、各人材バンクへ登録する形になります。

学びのサポーター・介助アシスタント(札幌市)

札幌市教育委員会の事業で、市立の小中高等学校等で特別な教育的支援を必要とする児童生徒の学習活動や学校生活を支援します。教員経験のある方は対象要件に該当します。

ただし、条件面は正確に理解しておく必要があります。これは有償ボランティアであり、謝金は1時間あたり1,075円(2026年8月時点)。雇用契約ではないため給与や諸手当は支払われず、社会保険・雇用保険の適用もありません。収入の柱として考える性質のものではなく、社会との関わりを保ちたい方に向いた選択肢です。

選択肢4:私立学校で教える

私立の中学・高校では、公立を定年退職した教員を非常勤講師として迎えるケースが継続的にあります。公立より早く定年を迎える法人もあり、教科の欠員が生じやすい構造もあります。

公立と大きく違うのは、採用が学校法人ごとの個別判断であることです。統一の登録システムはなく、各校への直接の問い合わせや、私学に特化した紹介サービスを経由する形が中心になります。知人の紹介で決まることも多い領域です。

校風や教育方針への適応が求められる一方、担当コマ数を相談しやすく、部活動の負担も学校によって大きく異なります。

選択肢5:学習塾・予備校で指導する

教科指導の力をそのまま使える道として、学習塾や予備校があります。ここは実態に幅があるので、少し詳しく整理します。

報酬水準の実際

札幌の学習塾・家庭教師の求人を見ると、講師の時給は大学生を中心とした層で1,300円から1,800円程度、指導経験を評価する枠でも2,400円前後という例が見られます(2026年8月時点の各社求人情報より)。集団指導では2,000円前後というのが一般的な水準です。

つまり、札幌市立学校の非常勤講師(時給2,884円)と比べると、一般的な学習塾の時給はむしろ低いのが実情です。「退職教員だから高く評価される」とは限りません。求人を見る際は、経験者向けの単価が別に設定されているかどうかを確認されることをおすすめします。

ただし、時給の絶対額だけで比べると判断を誤ります。非常勤講師は欠員補充のため空きが読めず、勤務も週15時間以内に限られます。塾・予備校は単価がやや下がる代わりに、年間のコマ数が最初から確定している場合があります。時給と確定コマ数を掛けて、年間の見込み額で比べるのが実際的です。

集団指導と個人指導は、まったく別の仕事

ここは意外と見落とされます。長く一斉授業をしてこられた方ほど、集団指導のほうが慣れていると感じられますが、私たちの見る限り、実際に募集が多く、かつ経験が活きるのは個人指導のほうです。

個人指導で求められるのは、講義の巧みさではありません。目の前の生徒がどこでつまずいているのかを見抜く力と、生徒が考えている間、黙って待てるかどうかです。教室全体を動かす技術とは、必要な筋肉が違います。

逆に言えば、30年以上教壇に立ってきた方が最も有利なのは、この診断の部分です。答案を一目見て「この子は指数法則ではなく、分数の扱いで詰まっている」と分かる。これは経験の蓄積でしか身につかず、学生講師には代替できません。

確認しておきたい条件

  • 年間のコマ数が確定しているか。「登録しておいて、必要があれば連絡します」という形態は、収入が読めません
  • 準備や記録の扱いが明示されているか。授業時間のみ有給で、準備が無給というのは業界の慣行ですが、明記されていないと後で不満が残ります
  • 交通費の支給条件。上限額が実費に見合うか、勤務日数に応じてどう支給されるかを確認しておくと安心です
  • 週のコマ数を調整できるか。年金の支給停止や扶養の範囲を考えると、上限を相談できるかどうかは重要です

選択肢6:学校の外で、指導歴を活かす

教科指導そのものから少し離れた選択肢もあります。

大学の非常勤講師

教職課程を持つ大学では、教育実習の指導や教科教育法の科目で、現場経験の長い方を求めることがあります。特に管理職経験者や、教育センターでの指導経験がある方に機会があります。

日本語教師

2024年度から「登録日本語教員」という国家資格が始まりました。420時間の養成講座修了などが要件となるため準備期間は必要ですが、国語科や英語科の経験は活きます。国内の日本語学校のほか、JICA海外協力隊の日本語教育分野では、中学・高校、大学、日系日本語学校などへの派遣があります。

生涯学習・公民館講座

市町村の生涯学習部門や公民館では、教養講座の講師を務める道があります。報酬は高くありませんが、専門分野を深めて発信したい方には向いています。社会教育士の称号取得を目指す方もいます。

通信教育の添削・教材制作

在宅で完結する働き方です。答案を読んで的確な指摘を書く力は、まさに教員の中核的な技能にあたります。単価は高くありませんが、時間と場所の自由度は最も高い選択肢です。

資格試験・採用試験の対策指導

教員採用試験の対策講座、公務員試験の教養科目、各種検定の指導など。受験する側の心理を熟知していることが強みになります。

制度上、必ず確認しておきたい3点

1. 在職中は、原則として副業ができません

現役の教諭、臨時的任用の講師、そして暫定再任用の職員も地方公務員です。営利企業への従事には任命権者の許可が必要で、無許可で塾講師として報酬を得ることはできません。「退職後」の選択肢を検討する際は、この線引きを明確にしておいてください。

一方、公立の非常勤講師については兼業の制限が緩やかです。札幌市の勤務条件の資料でも、臨時教諭には「アルバイトを含め、営利企業への従事等は原則として認められません」と明記されている一方、非常勤講師の欄にこの記載はありません。

2. 年金の支給停止(在職老齢年金)

厚生年金を受給しながら働く場合、年金額と報酬の合計が一定の基準を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。「働いたら年金が減った」という事態を避けるには、月あたりの収入をあらかじめ設計しておく必要があります。

働き先を選ぶ際は、週のコマ数や勤務日数を相談できるかどうかを確認しておくと安心です。

3. 社会保険・雇用保険の適用

短時間勤務の場合、勤務先の規模や労働時間によって加入の可否が変わります。週20時間未満であれば雇用保険は対象外、通常の労働者の4分の3未満であれば健康保険・厚生年金も対象外となるのが原則です。有償ボランティアの形態では、そもそも適用がありません。

何を基準に選ぶか ― 3つの問い

選択肢を並べただけでは決められません。講師として来ていただいた先生方と話していて、判断の分かれ目になると感じるのは次の3点です。

問い1:担任や校務を、もう一度やりたいか

「授業だけをやりたい」のか、「学校運営に関わりたい」のか。ここが最初の分岐です。前者なら非常勤講師・私学・塾、後者なら再任用フルタイムが中心になります。

問い2:収入は、生活の柱か、補助か

年金と退職金で生活が成り立つのであれば、時給の絶対額より、負担の軽さと納得感で選べます。一方、収入の柱として必要であれば、再任用フルタイムか、複数の仕事を組み合わせる設計が必要になります。

問い3:いつまで働くつもりか

65歳までなのか、70歳を超えても続けたいのか。長く続けたいのであれば、体力的に無理のない形を最初から選ぶほうが結果的に長続きします。週2回、1日数時間という働き方は、この点で現実的です。

私たちの場合 ― 個人指導という選択肢

最後に、私たちがどのような形で退職教員の方に指導していただいているかをお伝えします。判断材料の一つにしていただければと思います。

クラズユニックは1977年の開校以来、札幌で大学受験の指導を続けてきた学校法人立の予備校です。札幌駅前に北大・札幌医大・旭川医大を目指す医学部コースと、私立大学医学部を目指す完全個人指導コース、麻生本校に北大を始めとする難関国公立、難関私大を目指すコースがあります。そして全校舎で高校生(一部小中学生)の個人指導を運営しています。

現在、個人指導を担当していただいている講師の多くは、道内の高校を退職された先生方です。数学・英語・理科を中心に、1対1で指導していただいています。

報酬は時給2,500円です。札幌の学習塾の相場(経験者枠で2,400円前後)は上回りますが、札幌市立学校の非常勤講師(2,884円)には届きません。その代わり、コースによりますが、担当していただくコマ数を年間を通じてできるだけ確定しており、欠員の有無に左右されません。単価と安定性のどちらを重く見るかで、選ぶ先は変わってくると思います。

現在お願いしている講師の多くは、週1〜2回、1回あたり2〜4時間という勤務です。回数や時間帯はご相談のうえ決めています。医学部コースを担当される場合は日中の時間帯、高校生の個人指導は夕方以降になります。

勤務地は麻生本校・札幌駅前校・円山校の3校舎から、ご希望の校舎を選んでいただきます。いずれも地下鉄駅から徒歩5分以内で、札幌駅前校はJR札幌駅から徒歩1分です。

担任業務や進路指導、保護者対応は当校の専任職員が担当するため、教科の指導に専念していただける体制です。

個人指導では相性の問題が避けられないため、担当開始後の3回を相性確認期間とし、合わないと感じられた場合はいつでも担当を変更できるようにしています。これは講師の側から申し出ていただいても構いません。

契約期間や交通費、試用期間などの条件は、募集ページに具体的に記載しています。

個人指導講師を募集しています

時給2,500円/週1〜2回から相談可/担任業務なし/麻生本校・札幌駅前校・円山校から希望の校舎

お電話(011-716-7162)でも受け付けています。

「まだ退職後のことは決めていないが、どんな仕事なのかは知っておきたい」という段階でも構いません。校舎の見学だけでもお受けしています。実際に授業の様子をご覧いただくのが、いちばん判断しやすいと思います。その場で応募をお願いすることはありませんので、気軽にお声がけください。

よくある質問

Q. 定年退職の年度は、どう調べればよいですか

生年によって変わります。2025・2026年度の定年は62歳、2027・2028年度は63歳です。勤務先の管理職または事務局に確認するのが確実です。定年が1歳上がる年度には、定年退職者が発生しない年度が生じます。

Q. 再任用中に、塾で指導することはできますか

暫定再任用の職員は地方公務員にあたるため、営利企業への従事には任命権者の許可が必要です。無許可での兼業はできません。公立の非常勤講師については制限が緩やかです。

Q. 学習塾の時給は、公立の非常勤講師より高いのですか

一般的には、必ずしも高くありません。札幌の学習塾の時給は大学生中心の層で1,300〜1,800円程度、経験者枠でも2,400円前後という例が見られます。一方、札幌市立学校の非常勤講師は時給2,884円です。ただし非常勤講師は欠員補充のため空きが読めず、勤務も週15時間以内に限られます。単価だけでなく、年間のコマ数が確定しているかどうかを含めて比べてください。

Q. 集団指導と個人指導では、どちらが経験を活かせますか

意外に思われるかもしれませんが、個人指導です。個人指導で最も重要なのは、生徒がどこでつまずいているかを見抜く診断力と、生徒が考える間を待つ姿勢です。長い指導経験がそのまま強みになる部分であり、学生講師では代替が難しい領域です。

Q. 週1〜2回だけの勤務も可能ですか

勤務先によります。学習塾・予備校では週1〜2回から相談できるところが多く、私学の非常勤講師も担当コマ数を調整しやすい傾向があります。年金の支給停止を考慮して勤務時間を抑えたい場合は、応募の段階で相談されることをおすすめします。

Q. 教員免許が失効していても、塾で指導できますか

学習塾・予備校の講師に教員免許は必須ではありません。公立学校の臨時的任用や非常勤講師として勤務する場合は有効な免許状が必要になるため、免許管理制度の現況とあわせて教育委員会にご確認ください。


本稿の制度・報酬に関する記載は2026年8月時点の公表情報に基づくものです。実際の条件は自治体や勤務先により異なりますので、応募の際は必ず最新の募集要項をご確認ください。


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